スペシャルウィーク

[トレセン学園]
私、スペシャルウィークって言います！ 夢は日本一のウマ娘です！お母ちゃんたちに 喜んでもらうため…私、けっぱります！

[1日の終わりに]
トレセン学園に来てから もう何通目になるかな。 北海道のお母ちゃんたちへの手紙――

電話で伝えればすぐだけど、 こうして文字にすると 自分の本当の気持ち…… 嬉しかったことや悩んでることが、 とってもハッキリする気がする。

それはきっと、お母ちゃんたちにも ハッキリ伝わるってことだよね。 今日の私の気持ち、しっかり届くかな。

「お母ちゃんへ、元気にしてますか？」

[日本一のステージを]
「みみみ、みなさんっ、いつも熱い応援、 ほ、本当にありがとうごじゃいあつ！」

盛大に噛んだ姿がほほえましく、 会場内から笑いが起こる。

「ひ、人が、たくさん……！」

「スペちゃん、落ち着いて」

「練習したじゃん、大丈夫大丈夫！」

2人の言葉で落ち着きを取り戻したのか、 ひとつ深呼吸して、しっかりと前を向いた。

「きょ、今日は、たくさんありがとうを 伝えられるように、がんばります！」

彼女の言葉に歓声が上がる。笑顔と共に、 ウイニングライブが始まった。

[夕焼けはあこがれの色]
スぺ、手紙ありがとう。

早速迷ったとのこと、驚きました。 まったくスぺの方向音痴は誰に似たのか…… スズカさんにちゃんとお礼を言ってね。

優しいウマ娘さんと出会えてよかったね。 同室になったそうだけど、 寝坊したり散らかしたりして、 迷惑かけたりしないようにね！

今だから言えるけど、ウマ娘のいない土地で スぺは寂しくないかずっと心配してました。 だから、スズカさんって友だちができて お母ちゃん本当に嬉しかった！

友だちとの学園生活も楽しんでね。 スぺの大好きなうちの人参、送ります。 スズカさんにも食べてもらって。

スぺが、いつでも幸せでありますように。

お母ちゃんより。

[ハネ退け魔を退け願い込め]
「スペちゃんは羽根つきに 込められた願いを知っていますか？」

顔に墨を塗るための筆ペンを 私に差し出しながら、不意に グラスちゃんがそんなことを聞いてきた。

「羽根つきに込められた願い……？」

「この羽根の先の木の実には、 『健康でありますように』 という願いが込められていて…… 羽子板は、『様々な厄をハネのけて、 健やかに美しく育ちますように』 という願いを込めて お正月に贈られる物なんですよ」

「へぇー！」

「ですので羽根つきは本来、 打ち合って競うのではなく、 互いの健康を願って 長く打ち合い続けるものなんです」

「ええっ、そうだったんだ！ じゃあ次からはなるべく長く続けなきゃ！ ……あっ、じゃあハイ！　グラス先生！ もしかして罰ゲームで顔に墨を塗るのも なにか理由があったりしますか？」

「いい質問です、スペシャルウィークさん。 一説では墨の黒は魔を払う色とされていて、 それを顔に塗ることで魔除けとなり、 身が守られると考えられているそうですよ」

「なので、万が一 羽根を落としてしまっても、 墨を顔に塗れば大丈夫、ということですね」

「ただの罰ゲームじゃないんだね！ ――よし！」

受け取った筆ペンに ぎゅっと力を込めて深呼吸をする。

「グラスちゃんが 一年間ケガなく走れますように」 右目に一筆、大きな丸。 「風邪とか病気になりませんように」 左頬に一筆、斜めに線。 「美味しいものをたくさん食べて、 たくさん笑ってくれますように」 左頬にもう一筆、斜めに線。

一筆一筆に想いを込める。 友だちとして、ライバルとして いつまでもどこまででも 一緒に走れますようにと――

「……たくさんお祈りをしてくれて ありがとうございます、スペちゃん。 でも、ふふっ、ちょっと塗りすぎですね？」

「え？　わぁ！？　ごめんなさい！！！！」

[私たちと夢、掴みましょう！]
『日本一のウマ娘になる』

それが私の夢でした。 お母ちゃんと約束した、大切な夢でした。

けれど、私の夢は寒い朝の霧のようで。 うまく形にならない、ただの憧れのようで。 がむしゃらに、掴めないものを掴もうと していたんです。

――でも。

多くの出会いが、 私の夢を鮮やかにしてくれた！ ライバルとの熱いレース、 乗り越えなきゃいけない壁。 苦しいこと、悲しいこと。 嬉しいこと、楽しいこと。 そのすべてが、私の夢をかたどってくれた！

あなたに憧れはありますか？ 譲れない願いはありますか？ 追いかけましょう、一緒に！ 大切な、あなたの夢を掴むために！